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原点回帰の音を求めて。大河内満さん

Ken’s Clinic連載第四回目は、ビートルズ・コレクターの大河内満さんのお宅に伺いいました。
とても居心地の良さそうな空間のそこここにビートルズのポスター、写真、グッズなどが置かれ、きちっと整理されたLPとCD。男の遊び場というに相応しいお宅でした。
石黒さんと大河内さん、お二方のマニアックなビートルズ話に終始した楽しい4時間でした。

原点回帰の音を求めて。大河内満さん ビートルズとの出会い。
小学校低学年の頃、親に買ってもらったターンテーブルの大きさがシングル盤しかないようなモジュラー・ステレオがぼくにとって最初のステレオでした。
その時に天地真理、伊東ゆかり、タイガースのシングル盤も一緒に買ってきてくれました。母親はカラヤンの初来日公演を聞いたと言っていましたし。色んな音楽を聞いていたと思います。今でもパヴァロッティなんかが好きです。父親はショパンを聞いていたそうです。 テレビの洋画劇場で「荒野の七人」や「大脱走」を見て、映画音楽を聞き始め、お小遣いでレコードを買うようになり、歌謡曲もタイガースとかオックスとかペドロ&カプリシャスなんかを聞くようになりました。

ビートルズを聴き始めたのは中学に入った1975年頃からです。
同い年の従兄弟がマセていて、ビートルズを聞くようになったんです。ちょうどその頃、我が家の両隣に住んでいる年上のお兄さんやお姉さんの家からもビートルズが聞こえてきました。
もちろん、最初はそれがビートルズだということは知らなかったんですけど、「ヤア!ヤア!ヤア!」だの「ヘルプ!」だの同じような曲が両方でかかっていたので、気にはなっていました。

最初に買ったビートルズは従兄弟に譲ってもらった「サムシング」と「カム・トゥゲザー」のカップリングのシングル盤でした。
当時の僕にとってはレコードはかなり高額で、月に一枚シングル盤が買えるかどうかなので、従兄弟の家に行く時は、小さなオープン・リールのテープ・レコーダーを持ちだして、従兄弟のシングル盤をステレオからマイクで録音していました。
初めて買ったLPは『レット・イット・ビー』です。
「レット・イット・ビー」はシングル盤で持っていましたが、LPヴァージョンの方が、派手なギターソロも入っていてカッコいいので、確かクリスマスの時にやっとLPを手に入れました。
最初に家にLPをかかえて持って帰る時の悦びは今でも忘れません。
レコードを買うのがせいいっぱいでオーディオにお金は使えませんでしたので、中学時代はラジカセがやっとでした。FM番組を録音したり、人から借りたレコードをカセットに入れて聞いていました。

Ken'sClinic大河内満 映像を見ることで増々ビートルズにのめり込み、ステレオにも興味を持つようになりました。
まわりの友達の多くはどんどん新しいハード・ロック系のバンドに流れてしまったり、ジャズを聞くようになった友達もいたけれど、僕はやっぱりビートルズが一番好きだったんです。
その頃はまだ解散後のビートルズのメンバーが元気で活動していたこともあり、昔のビートルズをもう一度聞き直してみようということになったり。

当時はレコード屋さんでレコードを何枚か買うと、ビートルズ映画の映写会ご招待のイベントがあり、「ヤア!ヤア!ヤア!」と「ヘルプ!」と「レット・イット・ビー」を半日見られたんです。
映像で見るようになってから増々ビートルズにのめり込むことに拍車をかけました。
色んな音楽を聞いていましたが、圧倒的にビートルズが魅力的で、音もルックスもカッコ良かったんです。

大学に入る頃になってソニーのコンポ・ステレオなどを揃えるようになり、ステレオ感が広がりました。大学在学中にステレオも徐々にスピーカーを大きくするなどして大型化し始めました。FMチューナーが入っているレシーバーと2ウェイのスピーカーとアナログ・プレイヤー、すべてソニーで揃えました。その頃にハイファイ・ビデオが出始めました。80年頃です。
MTVとか「ベスト・ヒット・USA」が始まってから視覚的に音楽が楽しめる時代になったんです。
ジョン・レノンの「ウーマン」とか、アーハとかシンディ・ローパーとかマドンナとかが流行った頃です。
今から考えるとよく買えたと思うんですが、初めて発売されたベータ・ハイファイの20数万もするデッキを買いました。ミスタードーナツから新聞配達まで色々アルバイトをしまくりました。その頃から本格的にオーディオに興味を持ち始めました。

Ken'sClinic大河内満 海賊盤の音を聞きやすくする為にグラフィック・イコライザーを。
安いからというので輸入盤を買い始めたのは80年代に入った頃からで、その頃になると、ビートルズのアナログ・ブートが出始めるんです。
ブートレッグは高かったけれど、内容が良かったんです。何しろ、ビートルズの正規のアルバムは発売されないわけですから、少しでも違うものを聞きたいというので、ブートを聞くようになりましたが、音が悪いんですよ。そこで、グラフィック・イコライザーをつないで、少しでもいい音にしようと努力しました。大学時代です。

84年代中頃に社会人になってからCDプレイヤーを買いました。
CDプレイヤーを買った時の一番の動機は中島みゆきがCDでしか発売しないアルバムを出したからなんです。それを聞きたくてCDプレイヤーを手に入れました。まだ、ビートルズはCDを出していませんでした。
ツェッペリンの「天国への階段」の頭出しが一発で出来るというのが魅力的で、ツェッペリンは「レッド・ツェッペリンIV」から揃えました。
当時は大きな音で聞くことも出来なかったこともあり、音質に対してはそれ程分かっていなかったような気がします。それより何より操作性の便利さでCDを聴き始めました。

それとポール・マッカートニーがLPよりも曲の多いCDを発売し始めたので、だんだんCDを聞くようになりました。
恐らく周囲からの刷り込みだったと思いますが、CDはいい音だと思いました。就職して大阪に転勤になり、大阪にもタワーレコードが出来て輸入盤のCDが安く買えるので、色々と買い始めました。
まだレンタルCDはありませんでしたが、レンタル・レコードがあったので随分借りました。その頃は一枚でも多くの演奏を聞きたいと思っていましたので、装置にお金をかけるということまでには至らなかったんです。

CD マスター・サウンド・シリーズがきっかけとなり、音質にも興味を持つようになりました。
長いことビートルズのメンバーのライブを日本で見ることは出来ませんでした。でも、ビリー・ジョエルのコンサートなどに行くと必ずビートルズの曲をやるので、「シー・ラブズ・ユー」を歌った時なんかは涙を流して喜びました。
今になって海外の高音質盤なんかと聴き比べると、それほどいい音には感じませんが、当時ソニーレコードが発売したマスター・サウンド・シリーズを友達が持っていて、トトとかボズ・スキャッグス、ボストンなんかがとても迫力のあるいい音に聞こえ、少しずつマスター・サウンドのLPも買いました。

ジャケットもいいし盤質もきれいでとても良かったので、そのあたりから、ちょっとレコード・フェチ的な傾向が自分の中に芽生えてきました。ダイレクト・カッティングやハーフ・スピード・マスタリングもありました。とても丁寧な解説書も付いていて、プレスやカッティングなど、レコードにも色々なつくり方があるということを、あのシリーズに教えてもらったようなところはありました。

高音質盤に興味を持つきっかけがマスター・サウンド・シリーズですね。
今でもモービル・フィデリティとかクラシック・レコーズとかでいいタイトルが出ると買ってしまうのは、そのことが大きく影響しています。
その頃から、オーディオ装置にも目を向けるようになってきました。
今から思うと決して高額でも大したものでもないですが、大阪時代にケンウッドのプレイヤーを買った時に、お店の人に「これは一生ものだよ」と言われたことが耳に残っています。

当時、急速にCD化が進み始めていたので、ケンウッドが気を吐いて作った一台だったんです。ぼくも、当分まだアナログを聞くだろうなということで買いました。
油ひとつ注したこともないですが、そのプレイヤーはいまだに健在です。それに比べて初期のCDプレイヤーはよく壊れましたね。ピックアップのレンズが汚れたり、トレイの調子が悪くなったりして。CDプレイヤーは今ので4台目だと思います。

段々と音の違いが分るように・・・。
90年頃からビートルズ関係の本を読んで、英国盤の音がいいということや、モノラル盤があること、60年代にプレスされた盤の音がいいということを知りました。
聞き比べて、違いが段々分るようになってきたので、ステレオも少しずつグレードアップするようになりました。カートリッジもステレオだけではなくモノラル用も揃えました。今のようにLPプレイヤーを2台並べて聴き比べが出来るようになってからはまだ10年ぐらいですが、スピーカーはけっこう引っ越しの度に変えていたような気がします。最初の3世代はソニー製品で、確かソニーの30センチの2ウェイかな。

でも、その頃になると、コンパクトなステレオが流行るようになって、僕もそのブームに乗って15センチのダイヤトーンの2ウェイに変えたりしました。それなりにいい音で嫌いではなかったのですが、やはり、いつかはJBLという強い想いはずっと持ち続けていました。

ビートルズが好きですから、ロジャースとかB&Wなどイギリスのオーディオにも興味があります。数年前にアビーロード・スタジオがB&Wを使っているということが分かり、B&Wにしようか思いましたが、ぼくが買える予算内のB&Wはそんなにいい音がしないんです。音が甘いし、JBLのような迫力がない。ぼくは低音がポイントなので、B&Wにはまだいけないですね、いずれサブで持てればいいと思っています。
東京のオーディオ・ショップは色々と聴き比べが出来ていいですね。そんな時に聴き比べ用に持っていくCDは『ヘルプ!』です。ジョン・レノンの「悲しみをぶっ飛ばせ」でジョンの声やギターを聴きます。あとは、ジュリー・ロンドンの「ロンリー・ガール」の入っているアルバムかベスト盤を持っていきます。

ぼくはロック系を聞くことが多いので、ステレオも硬い音とか激しい音になりがちなのですが、映画音楽やジュリー・ロンドン、最近ではイージー・リスニングなども聞くようになってきましたので、そういう音楽を聴いても違和感の無いシステムにしたいと思うようになり、ガチガチに硬い装置になるのを避けるようにしています。
もちろん、自分の好みの音を再生してくれるオーディオであって欲しいですが、ルックスとかブランドに自分がとても拘っていることに今日、お話をしていて気づきました。
ぼくにとってオーディオ装置はビートルズを聴くための道具ですが、実はビートルズってそんなにレコーディングが優れているとはぼくは思っていないんです。ビートルズ以降の70年代にアメリカでレコーディングされたものなどを聴くと、ビートルズより素晴らしいものはいくらでもあります。

ビートルズ 音の基準はビートルズです。
スピーカーをJBLの大きいのにしてから分解能が上がったので、同じ低音でも、ベースとバスドラの音が聞き分けられるのがいいオーディオ、自分の好きなオーディオだと思うようになってきました。
ビートルズがいい音で鳴れば、ジミ・ヘンもイーグルスもジェームス・テイラーもいい音に聞こえます。自分の音の基準はビートルズですが、今風に言えばオヤジ・ロックを聴くのに合っている装置だと思っています。

いつも、まず始めに低音を聴いてしまいます。
中学の音楽室に、1mか1m50cmほど高さのある三菱の大きなスピーカーがあって、それが凄くいい音をしていたんです。年に一、二回のことなんですけれど、音楽の時間にみんなが自分の好きなレコードを1枚ずつ持ってきて聴く会があって、ぼくは『ヘルプ!』を持って行きました。確か、中1か中2の時です。
その時聴いた『ヘルプ!』が無茶苦茶にいい音がしました。
大口径のウーファーから出る低音がとても良かった。その時、ぼくは低音に目覚めました。あの時聴いた低音を自分の部屋で出したいなと思っているんです。

ビートルズ 石黒さんのクリニックを受けて。
今までに使ったオーディオ・アクセサリーは、スタビライザーとかです。
ケーブルで音が変わるということは聞いていたので、製品に付いているものではなく、5,000円程度のものですが、ケーブルを変えました。オルトフォンというブランドも好きでカートリッジを使っていますが、オルトフォンのコードはルックスもいいので、少しずつ変えているところです。ただし、アコリバさんの製品と比べたら、音の差は歴然でしたね。

インシュレーターも使ったことはありましたが、あまり効果は感じませんでした。アナログを聴きますので、クリーナーとかも結構使っています。電源が大切だということを知識としては知っていましたし、極性も分る範囲では合わせていました。
今回一番ビックリしたのは、コンセントから変える、つまり、電気の流れる上流から見直すという考え方で、とても納得の出来るものでした。
コンセントを変えただけで、あれ程音が劇的に変わるとは思ってもいませんでした。

実は、途中で1回エネルギーが減衰したことを感じました。
ぼくは自分の耳にそれ程自信がないので、聴き方を変えるべきなのかなとちょっとその時悩みましたが、それはクリニックの過程で起こることなんですね。コンセントから、電源コード、ラインケーブルに至るまで、すべてアコリバで揃えた時に大きな威力を発揮しますね。
僕の耳は今まで歪も迫力だと思って聞いていたのだと思います。石黒さんにクリニックをして頂いて以来、そのことが自覚出来て段々聴き方が変わってきました。でも、困ったことに、より大きな音で聞くようになりました。つまり、大きな音を出しても疲れないし、何度もリピートして聞いていられるからです。

原点回帰 ぼくの耳が悪かったのではなく、装置が未完成だったということですね。
ぼくはレコードの聴き比べが好きなので、モニター的な音を望んでいるんです。
つまり、細かい部分の違いが分るので、スタジオでも使っているJBLのスピーカーを選んでいるわけです。
一音一音楽器の音がよく聞き分けられるのですが、その分B&Wなんかと比べると疲れます。
細かい部分を聞き分けたいし、それがいい音だと思っているのに、あのスピーカーですら、クリニックを受けて以来、とても聴きやすくなったので、いつまでも大きな音で聴き続けてしまいます。

クリニックして頂いた日も、朝まで聴きましたし、昨日も夜中の2時過ぎまで聴いていました。
しかも、ビートルズだけではなく、他の音楽を聴いてもいい音になっているんですから驚きます。今まではビートルズのリミックスした音源を聞いていると、いい音になったと思っていたのですが、今回クリニックして頂いて以来、聴き比べてみると、60年代に創られたオリジナルのアナログの方が遥かに音がいいということが分るようになりました。
マスター・テープの劣化ということを昔から聞いていたのですが、今までぼくはそれを聞き分けることが出来ませんでした。

石黒さんに調整して頂いたおかげで、リミックスされた「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」のギターの音を聴いた時に、「あ! これがテープの劣化した音なんだ」と感じることが出来ました。
音が疲れているというか、いい音ではないんです。
今までそれが聞き分けられないのは自分の耳のせいだと思っていたのですが、そうではなくて、装置が未完成だったということなんですね。
この分じゃあ、また原点回帰になって、高いレコードを買うことになるんじゃないかな〜という気がしています。(笑)