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自分好みの音を目指して。蓮井幹生さん

蓮井幹生さんのシステム

スピーカーシステム JBL C36 VISCOUNT ALTEC A5
パワーアンプ McIntosh MC240(7581管)
プリアンプ McIntosh C22
レコードプレーヤー TOHRENS TD124  ortofon GME
CDプレーヤー ESOTERIC K07

学芸大学の蓮井さんの仕事場

13:30 スタート
まずはメイン・システムを聴かせて頂く。

試聴ディスクは上原ひろみの加わったCD『Jazz In The Garden / The Stanley Clarke Trio』。
盛大に鳴っているベースがくぐもっているのが気にかかる。

次にサブ・システムを試聴。試聴ディスクはLP『Sarah Vaughan with Clifford Brown』。
「ララバイ・オブ・バードランド」のヴォーカルが浮き出てくるや否や……

石黒:「これは素晴らしい、何も言うことないですね」

蓮井:「やっぱり古いのを聴く時はこちらで聴くことが多いですね~」

次にビリー・ホリデイのLP『Songs for Distingue Lovers』。

石黒:「とてもハイファイらしい音だな~、曖昧さが全く無い音で文句の付けようのない完璧なシステムです」

このLPをアルテックで聴くとつまらない音になってしまうのだから、オーディオというのは面白く、かつ深い。

その後、綾戸智恵の『BALLADS』、ヘルゲ・リエンのCD『To The Little Radio』。

蓮井:「余計なものを取り除いたというか、もっとピ~ンと張り詰めた感じが欲しいですね」

石黒:「分かりました、まずは壁コンセントから変えましょう」

蓮井:「え!コンセントを?」

14時30分壁コン取付け終了。

『To The Little Radio』試聴。

蓮井:「お~、余韻に透明感が出てきましたね~」

石黒:「倍音がきれいに出始めました」

蓮井:「何でこんなに変わるんですか?」

石黒:「変わったのではなく、演奏者が出している音が出てきたのだと思います」

マイルス・デイビス・オールスターズのLP『Walkin』を試聴。

蓮井:「あら~、ベースの音が全然違います」

蓮井さんは学生時代に吉祥寺のジャズ喫茶メグでアルテックA7を聴き、大人になったら絶対に手に入れたいと思ったそうです。

次に電源BOXまでを変えますと石黒さん。

電源ケーブルを変えて音が出た途端に「あ!変わった」と蓮井さんビックリ。

石黒:「楽器が本物っぽく聴こえ始めましたね」

蓮井:「確かにそうですね」

室内にゆったりと流れるマイルスのミュート・サウンドが色っぽく耳元で囁いていた。試聴ディスクをヘルゲ・リエンに変えると見事に北欧っぽい透明感が増している。

蓮井:「楽器本来の音色が出てきましたね」

石黒:「デティールが明確になり、本人たちが出している音そのものが出てきたんじゃないでしょうか」
   「次にライン・ケーブルを変えます」

CDとプリ間、プリとパワー間のケーブルをアコリバ製品に変更する。

ヘルゲ・リエン試聴。

石黒さんが手を加えるごとに、今までシステムにこびりついていたクセのようなものが消え、恐らくは演奏者が目指したであろう音楽がくっきりと際立ってくる。

マイルス試聴。

ベースのもたつきがなくなり、ばらばらに聞こえていた楽器のアンサンブルがサウンドとしてまとまって聴こえ始める。

15時05分
スピーカーケーブルを変え、セレクターを外してヘルゲ・リエン試聴。

蓮井:「又々変わりました。いいな~音がくっきり聴こえて、圧倒的にいい」

音のダイナミズムが増していることがよく分かる。
上原ひろみ試聴。

石黒:「演奏に抑揚が出てきましたね」

ソニー・ロリンズのLP『SONY'S TIME』試聴。
朗々としたロリンズの豪放な音と息づかいがリアルに響く。

綾戸智恵試聴。
綾戸智恵が上品になり、歌い方の細かいニュアンスが浮き彫りにされる。

蓮井:「でも、もうちょっと綾戸さんのドスが欲しいんですが」

石黒:「まだケーブルを変えただけです。これからですよ」

蓮井:「ケーブルだけで、こんなに音が変わるんですね。ぼくも昔マークレビンソンを使っ   ている時に、電源ケーブルで音が変わるということを聞いていたので、二、三本借りて聞いたことがあるんですが、劇的に変わるということがなかったんです」

石黒:「音は何をやっても変わりますが、ケーブルの個性を出すものもけっこうありますので、それは音が良くなっているのとは違うんですよ」

蓮井:「なるほど」

石黒:「音を創ってしまうケーブルもあるので、それが機材の持っている本来の音をマスキングしてしまうこともあります」

蓮井:「いや、今日は色んなことが勉強になるな~」

15時30分。
プリとパワーアンプ、CDプレイヤーの下にボード、スピーカーケーブルの下にケーブルインシュレターをかます。

蓮井:「そのボードの素材は何ですか?」

石黒:「ヒッコリーというドラムのスティックに使う木で、硬くて重いので音が甲高くならないし、密度が高いので音が膨らまないんです。普通、木を使うと音がぼわっと滲んでしまうんですけど、ヒッコリーにはそれがありません」

綾戸智恵試聴。
ボーカルの輪郭がハッキリし、声も太く本来の綾戸智恵に戻る。

15時40分
水晶インシュレーターをプレイヤーとプリアンプの下に設置。

綾戸智恵試聴。
ボーカルにパワフルさと生々しさが加わる。

『Moods Ville 8 The Frank Wess Quartet』試聴
アルテックの素の音が出て、いい意味で雑味が加わる。

15時50分
アンプの空いている端子にショート・ピンを差し込む。

蓮井:「あれ?それは何の意味があるんですか?」

石黒:「空いている端子からノイズが入り込むのを防ぐんです」

天然シルクの吸音材や天然クォーツレゾネーターをプレイヤー、アンプの随所に貼り付ける。

『Moods Ville 8 The Frank Wess Quartet』試聴

音が出ると同時に一言「素晴らしいね!」と蓮井さん。

16時10分
マイナスイオン発生器と超低周波発生装置を設置。

『think bach edouard felet』試聴

「ごめんなさい、これはよく分からない」と蓮井さん。
ちなみに、ぼくの耳にはハッキリと音像が広くなり、奥行きが深くなり、スピーカーの音離れがよくなって聴こえた。

「音場の奥行きや音像の立体感に注意して、もう一度聴いてみて下さい」と石黒さん

「確かに確かに、音のステージが広く深くなって空気を感じますし、音像が前に出てきましたね、集中して聴いてみるとよく判る」

16時半終了

蓮井:「いや~、面白かった。ちょっとしたことで色々変わるんですね~、オーディオはやっぱり面白いな~」

石黒:「だんだんエージングが進みますから、どんどん音がよくなってきますので、このまましばらくお聴き下さい」

〜後日談〜
やっぱり昔のアルテックの音が忘れられないと言っていた蓮井さん。クリニック(4月23日)を終え、インタビュー(5月17日)も終え、6月20日に電話をして、その後の音の変化についてお聞きしました。
音は確かに変化したそうですが、それよりもっと大きな変化が蓮井さん自体に起こっていた。

いや~、音がどんどん良くなっているんですよ。前回インタビューの時に、結局、昔ジャズ喫茶で聴いていた時の音を今でも追い求めているって言ったじゃないですか。最近、まてよと思い始めたんです。
つまり、それは最初に出会ったカルチャー・ショックがトラウマとなっているだけで、本当にそれはいい音だったのか?と思い始めたんです。ただ単に昔の音に自分はとらわれているだけなんじゃないかと。自分もシステムもどんどん進化するべきで、今、自分が聴いて素直にいい音だというものをもっと追求するべきだと思い始めました。

石黒さんにセッティングして頂いたままで聴いているんですが、全然疲れないんです。今の環境、今の自分にとってはこの音の方が合っていることが分かりました。
今度、長野の家にアコリバさんのケーブルを持ち込んで、音の変化を楽しもうと思っています。長野にはJBLの4345とオリンパスが置いてありますが、オリンパスがうまく鳴らないので、アコリバさんのケーブルで試してみたくなったんです。

実は、正直に言うと、石黒さんにクリニックして頂いた時には「あれ?音が痩せた!」と感じたんです。 ところが、日にちがたつごとに、それが間違いだったことに気がついたんです。

「グラマーだと思っていた女性が痩せすぎに変化してしまったように感じたんでしょ。でも,それって、実は以前はデブだったのをふくよかでグラマーだと思い込んでいた。それを石黒さんが見事にシェイプ・アップしてくれたということじゃないですか」と蓮井さんに尋ねると

そうそう、まさにそんな感じなんです。自分が固辞していたオーディオ観を見事に石黒さんに壊されてしまいました。今は、自分の好みの音を追求するスタート地点に立たされたような気分で、そのきっかけをつくって頂いた石黒さんに本当に感謝しています。

 

構成・文:磯田秀人(ピンポイント)