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A Taste Of Music Special Website - Peter Barakan / ピーター・バラカン

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profile

ピーター・バラカン
Peter Barakan

1951年、ロンドン生まれ。 ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在はフリーのブロードキャスターとして活動中。
「Barakan Morning」(Inter FM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK FM)、「CBS60ミニッツ」(CS ニュースバード)、「ビギン・ジャパノロジー」(NHK BS1)などを担当。近著に『ラジオのこちら側で』(岩波新書)、『ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック』(光文社 知恵の森文庫)など。


公式ブログはこちら
twitter @pbarakan

information

ピーター・バラカンさんのイベント情報


◎2014年5月31日(土)
『Shimokitazawa SOUND CRUSING 2014』
東京・下北沢に点在するライブハウスやバー、カフェなどで繰り広げられる音楽イヴェント。バラカンさんがホストを務めるReG Cafeには中村マリ、濱口祐自、Rei、Arthur Foelerが出演します。詳細はこちら

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ピーター・バラカン “A Taste of Music”

Recommended Albums

 ボブ・ディランという人の音楽の良さーーーこれを理屈で語るのはなかなか難しいですね。僕はたまたま12歳の頃から、彼がいちばん画期的なことをやっている時期にリアルタイムで体験することができました。それはすごい衝撃で、理屈を超えているんですよ。彼の作品を聴くことで、僕の音楽観はそうとう変わりました。ビートルズ、ローリング・ストーンズもそうだけど、ボブ・ディランの存在も大きい。あとはストーンズ経由のブルーズもありますが、これらの音楽がなければいまの僕はありません。ただ、デビューした頃のディランは大好きだったけれど、全くと言っていいほど聴かない時期もありました。

ボブ・ディラン

 1966年のバイク事故の影響で、クルーナー(Crooner)というか、毒気のないような歌い方に変わってしまった時期−−−アルバムで言うと『Nashville Skyline』や『Self Portrait』、『New Morning(新しい夜明け)』あたりですね。あの一連の作品は当時、僕は全然興味が持てなかったし、いまでも聴く頻度は低いかもしれない。1975年の『Blood on the Tracks(血の轍)』以降はまた興味を持って聴くようになったけれど、アルバムによってよく聴くものとそうでないものが分かれます。そう、僕は決してディラン・フリークではないのです。

 『Oh Mercy』(1989年)以降のディランは、かなりレヴェルが高くなったと思います。『Time Out of Mind』や『“Love and Theft”』はかなりの力作です。昔のディランとはまた違う良さがあるんですね。60年代のように時代を引っ張っていくような力はもうないけれど、プロフェッショナルなソング・ライティングの技術を駆使しながら、自分のルーツに向き合って言いたいことを上手く表現しています。もちろん、それができているのはディランだけではありませんが、かなり説得力を持った作品をいまも出し続けていると思います。ただ如何せん、あの声ですから(笑)、好き嫌いは分かれるでしょうね。


Together Through life

『トゥゲザー・スルー・ライフ』ソニー・ミュージック SICP-2237

 というわけで、ディランの推薦盤は最近の2作、『Together Through Life』(2009年)と『Tempest』(2012年)として、実際に音を聴いてみましょう。まずは『Together Through Life』から。このアルバムは音楽的にはとてもシンプルで、シカゴ・ブルーズの影響がかなり強いですね。歌詞もさほど複雑ではありません。1曲目の「Beyond Here Lies Nothin'」は、ほとんどオーティス・ラッシュの「All Your Love」ですね(笑)。確かにシカゴ・ブルーズは似たようなパターンが多いけれど、ここまでやっていいの?って感じです。ここまでくると、開き直っているというよりは、オマージュと言うべきでしょうか。
 最後の「It's All Good」は、いまの世の中がいかに嫌なことばっかりかを羅列しながら、終わりに“It's All Good”と結んでいます。絶望してもおかしくない中にも、何か希望を見出してすべてを受け入れるという姿勢が伝わってくる、とてもいい曲です。演奏は、いわゆるザイディコのスタイルに近いと思います。ルイジアナの、フランス語で歌うアコーディオンのブルーズのような感じですね。


Tempest

『テンペスト』ソニー・ミュージック SICP-3664

 先日の来日公演で最も多く演奏されたのが『Tempest』からの曲でした。最近のツアー・メンバーがみんなこのレコーディングに参加していて、来日メンバーもほぼ同じでしたね。1曲目の「Duquesne Whistle」の“Whistle”とは汽笛のことで、“Duquesne(デューケイン)”はピッツバーグ(ペンシルヴェニア州)のそばにある街のことだそうですから、そこを通る列車の汽笛のことを歌っているんですね。演奏はウェスタン・スウィングふう。ウェスタン・スウィングとは30年代後半から40年代にかけて、テキサスやオクラホマあたりで流行った、カントリーとスウィング・ジャズが交ざったような音楽です。この軽く弾むドラミングはジョージ・リセリが得意とするところで、ライヴで聴いたときも本当に気持ちよかったです。彼はロックっぽい曲をやっても、決してドラムが重くならない。バックではギターがグランジィな音を出していたりして、面白いバランスをとっていますね。そして全体として、『Together Through Life』よりも『Tempest』のほうが、もう少しインパクトが強い音になっています。こういういいステレオで大き目の音量で聴くと、初めて気が付くことがいろいろあって面白いです。
 「Early Roman Kings」は、これまたシカゴ・ブルーズの世界(笑)。マディ・ウォーターズの「Hoochie Coochie Man」とか、ボー・ディドリーにも通じる、いまのボブ・ディランに顕著な感じですね。また、アコーディオンが入っていますが、これは素晴らしいギタリストであるロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴが弾いています。おそらく、ブルーズ・ハープの代わりにアコーディオンを入れているのでしょう。


 多くの人には、ハーモニカを吹くボブ・ディランのイメージがあると思いますが、実はブルーズ・スタイルのハーモニカは得意ではありません。そもそも、彼が若い頃にやっていたハーモニカはある種でたらめ。ディランの前に、ああいう吹き方をする人はウディ・ガスリくらいしかいなかったと思います。それがいつの間にか、完全にあの人のスタイルになっちゃったんですね。すごく神経が図太いというか……初期のディランはある意味でパンクなんですよ。
 歌い方も変わっているディランですが、「Blowin' In The Wind」がなぜヒットしたかというと、先にピーター、ポール&メアリーの正統な歌い方があったり、当時のフォーク・ミュージックの女王的存在だったジョーン・バエズが彼を絶賛したから世間が注目したようなもので、最初から彼が歌っていたら、たぶんラジオではかからなかったでしょう。でも、スターになっちゃうと、彼を真似して同じようなハーモニカを吹く人があとからどんどん出てくるから、不思議なものだなと思いました(笑)。
 ところで、“Blowin' In The Wind”という有名なフレーズは彼が作ったものですが、邦題は「風に吹かれて」となっていますね。悪い訳ではないけれど、正しくは「(その答は)風の中に舞っている」という意味で、「掴めそうで掴めない」という感じ。「風に吹かれて」と言うと、ピューっとどこかに飛んで行ってしまいそうですが、そういうニュアンスではないんです。「風に吹かれて」なら、“Blowin' By The Wind”になりますね。



  • 手作りスピーカー
  • ←巨大なスピーカーはAltecの同軸ユニット604を設えたもので、店長の成さんによる自作。GEMのスーパー・ツイーターを乗せ、下にはJBLのサブ・ウーファーも。「bonoboは、フロア面積のわりにスピーカーをはじめオーディオ・セットが大きくて圧倒されました(笑)。ここまで音に凝ると、楽しいものがありますよね」(バラカンさん)

  • オーディオセット
  • ←DJブースとオーディオ・システムがある1階フロアでは、さまざまなジャンルのライヴも行われているbar bonobo。古民家を改装した造りも面白く、2階やバルコニーも利用できる。

  • 真空管ミキサー
  • ←真空管を11本搭載した4ch真空管ミキサー(小松音響研究所製)は、ニューヨークの有名クラブ「ザ・ロフト」のデイヴィッド・マンキューゾが認めた一品物で、当店のお宝の一つ。

  • 音楽談義のお二人
  • ←bar bonoboの店長・成 浩一さんと、しばし音楽談義のお二人。

  • bar bonobo
  • ←音楽をじっくりと聴き込んで見えてくるものは……?