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ピーター・バラカン
Peter Barakan

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、「Barakan Beat」(Inter FM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。著書に『200CD+2 ピーター・バラカン選 ブラック・ミュージック アフリカから世界へ』(学研)、『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『猿はマンキ、お金はマニ 日本人のための英語発音ルール』(NHK出版)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『ぼくが愛するロック名盤240』(講談社+α文庫)などがある。


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twitter @pbarakan

information

ピーター・バラカンさんのイヴェント情報


◎2015年9月5日(土)
「ピーター・バラカンDJライヴ “いのちの歌”」
バラカンさん選りすぐりの音源で「いのちの歌」の魅力に迫ります。会場:広島YMCA仮会館(開演15:00)。詳細はこちらをご参照ください。

◎2015年10月28日(水)
「バラカン・イヴニング Vol.04」
毎回、異なるテーマとゲスト(未定)、そして飲食メニューでお送りしている人気イヴェント。会場:晴れたら空に豆まいて(開場18:30/開演19:30)。詳細はこちらでご確認ください。

◎2015年11月23日(月)
「ピーター・バラカンのPing-Pong DJ SPECIAL〜BLUES篇」
バラカンさんの人気イヴェント、”Ping-Pong DJ” が「晴れ豆」に登場! MONSTER大陸から千賀太郎さんと藤倉嗣久さんの両氏を迎えて送る、とっておきのスペシャル・ヴァージョンに。会場:晴れたら空に豆まいて(開場17:30/開演18:30)。詳細はこちらまで。

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A Taste of Music vol.02

  • Acoustic Revive
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  • LINN JAPAN 様
  • NASPEC
  • Syntax 様
  • Timelord 様
  • yukimu 様

おことわり

◎当サイトではピーター・バラカン氏の意向により、人名などのカタカナ表記について、一般的なものとは異なり、実際の発音により近い表記を採用しています。


Recommended Albums
Tokyo Adagio

『Tokyo Adagio』

 僕がお勧めするレコードを紹介するこのコーナー、1枚目はチャーリー・ヘイデンの『トーキョー・アダージョ~ライヴ・アット・ブルーノート東京』です。2005年、ブルーノート東京でゴンサロ・ルバルカバを迎えて行われたステージをライヴ録音したものです。この公演は3月16日から19日まで行われましたが、僕もこのライヴは観ています。2014年に亡くなったチャーリー・ヘイデンはその晩年、子供の頃に罹ったポリオの後遺症に悩まされ、一時は演奏活動を続けられなくなったこともあったそうですが、このデュエットではとてもリラックスして弾いていたと記憶しています。

 チャーリー・ヘイデンは元々、デュエットでの録音を好むベイシストでもありました。相手のゴンサロ・ルバルカバは、チャーリー・ヘイデンに発掘されたと言っていいジャズ・ピアニストです。1986年に、ハバナで開催されたジャズ・フェスティヴァルで彼を見出したチャーリー・ヘイデンは即セッションを申し出て、そのテープをブルーノートの社長、ブルース・ランドヴァルに聴かせるなどして世界的なデビューを後押ししました。そんな二人のデュエットは、ともすれば眠くなってしまうくらい心地よいライヴでした。タイトルにある“Adagio”は、確かチャーリー・ヘイデン自身が選んだ言葉で、“緩やかな演奏速度”を示す音楽記号でもありますが、静かで、とてもゆったりとした演奏が印象的です。まさか録っているとは思いませんでしたが、すごくいいアルバムです。家でご飯を食べながら聴いても気持ちいいですよ(笑)。もちろん、しっかり向き合って聴いても十分に聴き応えのあるアルバムですが、こういう演奏はBGMにもできます。家のリヴィングでそうする分には、ミュージシャンに対して失礼にはならないでしょう(笑)。

 ベイシストとしての彼に対する印象は、とにかく音がいいということ。木の音を鳴らすことができるベイシストなんですね。打楽器的に弾くのではなく、とても丸みのある音を出す人です。そして、こういうデュエットをよく聴くと、相手の演奏を上手く支えながらも時に刺激するような、ちょっと変わったハーモニーを入れてみたりしている。すごく面白いミュージシャンであることがわかります。

Recommended Albums
Nueva Era

『Nueva Era』

 次は「LIVE MAGIC!」にも出演してくれるキューバ出身の女性シンガー、ダイメ・アロセナのデビュー・アルバム『ヌエバ・エラ』を紹介します。もう5~6年前でしょうか、イギリスのDJ、ジャイルズ・ピーターソンらがキューバを特集した企画アルバムを作るためにハバナを訪れた際に彼女の歌を聴いて、一発で打ちのめされたらしいですね。その時、ダイメはまだ10代だったそうです。学校ではクラシックを学んでもいたけれどジャズも好き、一方でキューバの伝統的な音楽にも詳しかったそうです。だから、すでにいろんなところから引き合いがあったらしいのですが、とりあえずはジャイルズのレーベルと契約することになり、出来上がったのがこのアルバムです。

 本作は、どちらかというとジャズということになるでしょうか。ただし、純然たるジャズ・ヴォーカル作品と言えるかというとそうでもなくて、キューバのパーカッションが強く絡んでくる曲が多く、また、ヒップホップの要素もみられます。ここでアルバムからシングル扱いの「Don't Unplug My Body」を聴いてみたいと思いますが、この曲は今の若い人たちもすんなり聴いてもらえるような音作りになっています。ほとんどの曲でプロデュースを務めているのがシンバッド(Simbad)というDJ / ミュージシャンで、ジャイルズの音楽仲間です。だから、参加ミュージシャンはキューバとイギリスの両方から集められていますね。現在23歳の彼女は、今後も相当伸びていく歌手の一人だと思います。「LIVE MAGIC!」ではその堂々たる歌いっぷりに、ぜひ注目してみてください。

Recommended Albums
Bound By The Blues

『Bound By The Blues』

 もう1枚はスライド・ギターの名手、サニー・ランドレスの新作『バウンド・バイ・ザ・ブルーズ』で、こちらも7月に出たばかりのアルバムです。最近はいろんなタイプの曲を書いていた彼ですが、今回は自身のルーツであるブルーズに回帰していて、収録10曲のうち半分はブルーズの有名曲のカヴァーとなっています。とにかく独特のギターを弾く人で、他のスライド・ギター奏者とは明らかに違う。右手はサム・ピックを使用しつつフィンガー・ピッキングも行い、左手はボトルネックを使いながら他の指でフレッティングもするんですよ。本当にユニークな音を持っている人です。僕は「ターボ付き」という言い方をしていますが(笑)、音が大きくてパワーを感じさせるスライド・ギタリストですね。

 僕が初めて彼の演奏をライヴで観たのは、1988年に初来日公演を行ったジョン・ハイアットのバックとして参加していた時でした。あのすごいスライドの弾き方にびっくりして「あのギタリストは誰だ」と、観た人はみんな話題にしていましたね。ここ数年はエリック・クラプトンの“クロスロード・ギター・フェスティヴァル”にも自分のトリオでほぼ毎回、それもオープニングに登場しています。クラプトンも彼のことが大好きで、だいたい1曲か2曲は飛び入りして一緒に演奏しています。歌声も良く、いい曲を書いてギターも抜群に上手い。悪いところが何もないという(笑)、僕も大好きなミュージシャンです。今回のアルバムはブルーズ好きなら100%お勧めできます。